地中・架空送電技術開発と展望 · 2017-04-27 ·...

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地中・架空送電技術開発と展望 59 地中・架空送電技術開発と展望 Technical Development and View of Underground and Overhead Transmission Line 19 世紀にエジソンによる白熱灯の発明を契機に,電力を送る架空・地中送電線が開発され,現在では網の目 のように送電線網が張り巡らされている。この間,大容量化,高電圧化・高信頼化等に対応するため電線・ケ ーブルはもとより,機器・工事においても種々の開発・改善がなされてきている。特に近年では超高圧 CV ケ ーブルに代表されるケーブルの高信頼化技術の開発,機器のコンパクト化技術等の開発には目をみはるものが ある。ここでは,これら送電技術開発の現状と展望について述べる。 Electric power transmission cable was developed after the invention of an incandescent lamp by Edison in 19th century and now transmission lines are built all around. Electric wire/cable including these accessories have been improved to answer to the requirements for higher voltage, higher reliability. In recent years, remarkable development in high reliabili- ty for XLPE cable and in compact type joint/termination are achieved. In this paper, the state and view of technical devel- opment are described. 松本信行 ****** Nobuyuki MATSUMOTO 品川潤一 ***** Jun-ichi SHINAGAWA 堀田信彦 **** Nobuhiko HOTTA 新井敦宏 *** Atsuhiro ARAI 土屋裕二 ** Yuji TSUCHIYA 佐藤 淳 Jun SATO * 電線事業部 電線技術部 ** 電力システム事業部 電力ケーブル技術部 *** 電力システム事業部 電力機器技術部 **** 電力システム事業部 地中線施工部 ***** 技術開発センター 電力システム開発室 ****** 電力システム事業部 電力システム技術部 1.ま え が き 19 世紀後半にエジソンが白熱灯を発明し,電気エネルギ ーを送るための送電線が開発された。その後,幾多の改 良・開発がなされ,現在では最高 500 kV の地中・架空送 電線が日本国中に張り巡らされている。ここでは,当社の 送電技術の開発と共に,今後の展望について述べる。 2.架空送電技術の変遷 2.1 架空送電線の変遷 (1) 架空送電線 わが国の架空送電線は,1920 年に国産初の鋼心アルミよ り線(ACSR)が製造されて以来,コスト面でも銅より有 利であること,高強度および耐熱アルミ合金線が開発され たことなどにより,アルミ電線が普及していった。一方, 1952 年に運開した 275 kV 新北陸幹線以後,遠隔地に建設 される発電所から電力需要家が集中してきた都市部まで送 電するため,送電線路の超高圧化が図られ,1973 年から 500 kV 送電線路が次々と建設され,1994 年には 1 000 kV 設計の西群馬幹線が運開した(500kV運用)。 この間,送電線は,大容量送電の要求に応えるため,前 述のアルミの耐熱性を向上させた耐熱アルミ合金線(TAl) を適用し,ACSR に比べ約 1.6 倍の許容電流を有する鋼心 耐熱アルミ合金より線(TACSR)や耐熱かつ高強度な高 力耐熱アルミ合金線(KTAl)を適用した鋼心高力耐熱ア ルミ合金より線(KTACSR)等が次々と開発・採用され, 導体サイズも 810 mm 2 ~ 1 520 mm 2 といった大サイズ化が 一気に進んだ。また,電線外径及び機械的特性を従来電線 と同等にし,圧縮型アルミ線を用いてアルミ占積率を増加 させ,抵抗損失を低減させた低損失電線も採用されてきた。 また,超高圧化に伴うコロナ特性面から多導体が図られ, 1961 年には 4 導体,1978 年には世界初の 6 導体線路が,近年 では,前述の 1 000 kV 線路で,8 導体が適用されている。 電力需要の増加に伴い,特に都市部近郊の送電線路では, 既設鉄塔の建替えや嵩上げを行わずに増容量を図りたいと いう要求から,許容電流が大きくかつ高温での運用時にも 弛度の増加を抑制した増容量低弛度電線が種々開発され た。低弛度型電線には,アルミ層に張力を分担させない間 隙型電線と,鋼心部に従来の鋼線に対して線膨張係数を低 減し電線の伸びを抑制した線膨張係数低減型電線がある。 間隙型電線は,より線製造時に鋼心部とアルミ部に間隙を

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地中・架空送電技術開発と展望 59

地中・架空送電技術開発と展望

Technical Development and View of Underground and Overhead Transmission Line

19世紀にエジソンによる白熱灯の発明を契機に,電力を送る架空・地中送電線が開発され,現在では網の目

のように送電線網が張り巡らされている。この間,大容量化,高電圧化・高信頼化等に対応するため電線・ケ

ーブルはもとより,機器・工事においても種々の開発・改善がなされてきている。特に近年では超高圧CVケ

ーブルに代表されるケーブルの高信頼化技術の開発,機器のコンパクト化技術等の開発には目をみはるものが

ある。ここでは,これら送電技術開発の現状と展望について述べる。

Electric power transmission cable was developed after the invention of an incandescent lamp by Edison in 19th centuryand now transmission lines are built all around. Electric wire/cable including these accessories have been improved toanswer to the requirements for higher voltage, higher reliability. In recent years, remarkable development in high reliabili-ty for XLPE cable and in compact type joint/termination are achieved. In this paper, the state and view of technical devel-opment are described.

松 本 信 行******

Nobuyuki MATSUMOTO

品 川 潤 一*****

Jun-ichi SHINAGAWA

堀 田 信 彦****

Nobuhiko HOTTA

新 井 敦 宏***

Atsuhiro ARAI

土 屋 裕 二**

Yuji TSUCHIYA

佐 藤   淳*

Jun SATO

* 電線事業部 電線技術部

** 電力システム事業部 電力ケーブル技術部

*** 電力システム事業部 電力機器技術部

**** 電力システム事業部 地中線施工部

***** 技術開発センター 電力システム開発室

****** 電力システム事業部 電力システム技術部

1.ま え が き

19世紀後半にエジソンが白熱灯を発明し,電気エネルギ

ーを送るための送電線が開発された。その後,幾多の改

良・開発がなされ,現在では最高500 kVの地中・架空送

電線が日本国中に張り巡らされている。ここでは,当社の

送電技術の開発と共に,今後の展望について述べる。

2.架空送電技術の変遷

2.1 架空送電線の変遷

(1) 架空送電線

わが国の架空送電線は,1920年に国産初の鋼心アルミよ

り線(ACSR)が製造されて以来,コスト面でも銅より有

利であること,高強度および耐熱アルミ合金線が開発され

たことなどにより,アルミ電線が普及していった。一方,

1952年に運開した275 kV新北陸幹線以後,遠隔地に建設

される発電所から電力需要家が集中してきた都市部まで送

電するため,送電線路の超高圧化が図られ,1973年から

500 kV送電線路が次々と建設され,1994年には1 000 kV

設計の西群馬幹線が運開した(500 kV運用)。

この間,送電線は,大容量送電の要求に応えるため,前

述のアルミの耐熱性を向上させた耐熱アルミ合金線(TAl)

を適用し,ACSRに比べ約1.6倍の許容電流を有する鋼心

耐熱アルミ合金より線(TACSR)や耐熱かつ高強度な高

力耐熱アルミ合金線(KTAl)を適用した鋼心高力耐熱ア

ルミ合金より線(KTACSR)等が次々と開発・採用され,

導体サイズも810 mm2~1 520 mm2といった大サイズ化が

一気に進んだ。また,電線外径及び機械的特性を従来電線

と同等にし,圧縮型アルミ線を用いてアルミ占積率を増加

させ,抵抗損失を低減させた低損失電線も採用されてきた。

また,超高圧化に伴うコロナ特性面から多導体が図られ,

1961年には4導体,1978年には世界初の6導体線路が,近年

では,前述の1000 kV線路で,8導体が適用されている。

電力需要の増加に伴い,特に都市部近郊の送電線路では,

既設鉄塔の建替えや嵩上げを行わずに増容量を図りたいと

いう要求から,許容電流が大きくかつ高温での運用時にも

弛度の増加を抑制した増容量低弛度電線が種々開発され

た。低弛度型電線には,アルミ層に張力を分担させない間

隙型電線と,鋼心部に従来の鋼線に対して線膨張係数を低

減し電線の伸びを抑制した線膨張係数低減型電線がある。

間隙型電線は,より線製造時に鋼心部とアルミ部に間隙を

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー60 Vol. 51, No. 1 (2001)

設けるギャップ電線が1971年に,より線のアルミ層に塑性

変形域に達するまでの強加工を与えアルミ層に伸びを生じ

させ,鋼心とアルミ部に間隙を設けるルーズ電線が1975年

にそれぞれ実用化されている。一方,線膨張係数低減型電

線は,鋼心部に線膨張係数の小さなインバ線を適用し,ア

ルミ導体部には耐熱性の高い超耐熱系アルミ合金(ZTAl,

XTAl)を適用したインバ電線が1980年に実用化されている。

架空送電線路の用地取得難等に伴い,景勝地を通過せざ

るを得ない場合や,線路近傍の市街化が進んだことから,

周辺環境を考慮した電線が開発された。送電線の通過地が

自然公園等の景勝地の場合は,景観を損なわぬ様,電線表

面をブラスト処理して,太陽光の反射を抑制した低反射電

線や電線表面にベーマイト処理を施して光沢を抑制した低

明度電線が採用されている。

また,強風時に電線から発生する風切り音(電線風音)

の防止対策として,既設の電線にスパイラルロッドと呼ば

れる弦巻素線を巻きつける方法が開発され,1973年に適用

されている。この風音対策は,電線自重や風圧荷重の増加,

コロナ騒音の増加という課題が生じ,電線自体に突起を設

けた低風音電線が開発され,1987年に実用化された(図1)。

さらに,前述の風音低減特性とコロナ騒音が標準電線と同

等な特性を併せ持つ低騒音電線が開発され,1000 kV送電

線に適用された(図2)。

近年,電線の風圧荷重は,支持物の設計に大きな影響を

及ぼすことから,電線の風圧荷重を軽減し,送電設備をコ

ンパクト化すべく,低風圧電線が検討されている。

(2) 架空地線

従来,電力線に対する雷害対策としての架空地線には亜

鉛めっき鋼より線が主に架線されていた。電力需要の増大

により架空送電線路の大容量化が進んだことから,架空地

線には,常時の誘導電流が増加すると共に地落事故時には

大地帰路電流も増大し,かつ,近接通信線に対する誘導遮

蔽も考慮しなければならなくなった。このような理由から,

従来の亜鉛めっき鋼より線では誘導遮蔽効果が不十分の

為,導電率を高め,電流容量の大きな架空地線が必要とな

ってきた。

この対策として,C合金(Cu-Ni-Si合金)より線及び鋼

心イ号アルミ合金より線(IACSR)が1950年に,1954年

には銅覆鋼より線が架空地線として採用された。

その後,1960年にアルミ覆鋼線が開発・実用化され,亜

鉛めっき鋼線に比べ,導電率が高く,耐食性にも優れかつ

軽量であることから,架空地線として広く採用されている。

一方,高度情報化社会の進展に伴い,光ファイバを利用

した大容量情報伝達網の構築が推進されていく中で,既存

の架空送電設備を情報伝送路として活用すべく開発された

のが,光ファイバ複合架空地線(OPGW:Composite

Fiber Optic Ground Wire)である。

OPGWは,架空地線に光ファイバを内蔵させたもので,

その収納構造から固定型及び非固定型があり(図3,図4),

1981年に実線路に適用された。

内蔵されている光ファイバは,OPGW実用化当初のマル

チモードから情報伝達量の増大に伴い,シングルモードへ

と移行してきた。近年,更なる情報伝達量の加速度的な増

加及び光ファイバ技術の進歩と共に,多心化(60心)や長

距離大容量伝送を可能にした1.55μm分散シフトファイバ

が実線路に適用されている。

成形アルミ線(突起部)�

成形アルミ線(平滑部)�

鋼線�

図1 低風音電線の構造例

成形アルミ線(突起部

成形アルミ線(平滑部

鋼線�

図2 低騒音電線の構造例

アルミ覆鋼線�

アルミパイプ�

溝付アルミスペーサ�

光ファイバ�

図3 固定型OPGWの構造例

アルミ覆鋼線�

アルミパイプ�

光ファイバ�

図4 非固定型OPGWの構造例

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地中・架空送電技術開発と展望 61

以上の架空送電線及び架空地線を,目的別・機能別に分

類すると,図5のとおりとなる。

2.2 架空送電線の今後の課題

これまでの架空送電線の技術開発の歴史は,社会環境の

様々な変化や日本特有の送電設備立地条件に対応すべく,

研究開発が行われてきた。図5に示すような電線技術は,

このような背景から開発された日本固有の技術と言っても

過言ではなく,高度成長期には,電力需要の急激な増大と

相まって「大容量・増容量・低損失」と呼ばれる電線が,

安定期には「環境調和」,「高機能」と呼ばれる電線が開発

されてきた。

今後は,電気の供給システムの変化に対応し,建設及び

稼動コスト低減を主体とした技術や送電設備周辺の環境を

考慮した技術がこれまで以上に求められるであろう。また,

これまでのような電力需要の伸びが見込めない状況や,電

力自由化が促進されることから,既設設備の適切な保守管

理技術,点検・劣化診断技術および延命技術等がこれまで

にも増して求められるであろう。

一方,OPGWのような高機能技術や耐雷架空地線,難着

雪電線のような信頼性技術の更なる要求が高まってくるこ

とは必至と思われる。

3.電力ケーブル技術開発の概要

3.1 電力ケーブルの変遷

20世紀初めに,日本で電力ケーブルの製造が開始され,

当社も1939年に,20 kV 3×150 mm2 SLケーブル(図6)

を日本鋼管ñ殿に納入して以来,約60年が経過した。

当初使用されたケーブルは,絶縁紙に高粘度絶縁油を含

浸したソリッドケーブルであり,11 kVクラスにはベルト

紙ケーブルが使用された。その後,ベルトケーブルを改良

し,ベルトケーブルの各心にしゃへい層を設けたHケーブ

ル,各心に鉛被を施したSLケーブルが開発され,22~

33 kVまで使用された。しかしこれらソリッドケーブルは,

絶縁体中にボイドが生じる欠点があったため,低粘度の絶

縁油を加圧含浸するOFケーブルが開発された(図 7)。

OFケーブルは絶縁油が常時加圧されているため,ソリッ

ドケーブルの欠点であったボイドの発生がなく,絶縁性能

の飛躍的な向上がなされたため,66 kV以上の電力ケーブ

ルの主役となった。

当社は,1953年,当時の日本国有鉄道殿に60 kV 1×

200 mm2 OFケーブルを納入し,1958年には,わが国で初め

て154 kV OFケーブルを東京電力㈱殿蔵前線に納入した。

その後,1964年に275 kV OFケーブルを中部電力㈱殿に,

1974年には500 kV OFケーブルを東京電力㈱殿に納入し

た。

この間,OFケーブルの高電圧化,高信頼化のために,

薄紙絶縁紙の採用,金属シースとして鉛に代わりアルミの

採用,超高圧用に鉱油に代わる合成油の採用,半合成紙絶

  増容量

・大サイズ電線

・鋼心(超)耐熱アルミ合金より線系電線

 増容量弛度抑制

・ギャップ電線

・ルーズ電線

・インバ電線

  環境調和

・低反射電線

・低明度電線

・低風音電線

・低騒音電線

  高機能

・光ファイバ複合架空地線

  低損失

・低損失電線

架空送電線 の

電線技術

図5 架空送電線の電線技術

図6 SLケーブル

図7 OFケーブル

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー62 Vol. 51, No. 1 (2001)

縁紙の開発・採用などが図られてきた。

一方,OFケーブルに比べ保守が容易なゴム・プラスチ

ックケーブルが,低圧・配電用に使用されていたが,高い

絶縁性能・許容温度を有する架橋ポリエチレンを絶縁に用

いたCVケーブルが注目され順次高電圧化が進み,現在で

は超高圧ケーブルを含め,OFケーブルに取って代わって

いる。

当社では,1961年に6.6 kV CVケーブルを四国電力㈱に

納入以来,1966年に66 kVを東京芝浦電気㈱殿(現在は㈱

東芝殿),1977年に154 kV,1986年には275 kV CVケーブ

ルを東京電力㈱殿に納入した。

このように,CVケーブルはその優れた絶縁性により飛

躍的に高電圧化が進められたが,その過程において,水ト

リー劣化が発見された。水トリーは,水分と電界の共存下

で絶縁体の欠陥(異物・ボイド・内外導突起)を起点に発

生するもので,起点の位置により,内導トリー,ボウタイ

トリー,外導トリーの3種類に分類される。これらの水ト

リー対策としては,絶縁体の異物管理,内・外導と絶縁体

の3層同時押出し,架橋方式の乾式化,簡易遮水層の採用

などの改善がなされてきた。これらの改善により,水トリ

ーを抑制できるようになったばかりでなく,長期絶縁性能

の向上が図られ,絶縁体の厚さも低減されてきている。

3.2 ケーブル製造技術の進歩

当社は近年の電力ケーブルに要求される超高圧化,大容

量,高信頼性,長尺化に対応するため愛知工場を新たに建

設し,1995年10月に稼動を開始した。

この愛知工場は,当社の電力事業再構築の最大の基地と

位置づけられ,CV及びOFケーブルの一貫生産工場である。

CVケーブルについては超高圧化が進む中,異物管理シ

ステムとして最新のクリーン化技術を採用するとともに,

長尺・大サイズケーブルの製造対応設備を導入し,CIMを

用いた各種システム管理により円滑な生産管理を可能と

し,ユーザー各位の多様な要求に十分対応できる工場とし

た。

OFケーブルについては,我が国初の500 kV級長距離線

路である電源開発ñ殿の本四連系線の建設を初めとして各

方面の超高圧プロジェクトに参画しており,長い歴史の中

で蓄積した製造技術は,この愛知工場に全て受け継がれて

いる。

また新工場の建設に伴い,長尺化に対応すべく製造設

備・搬送設備の増強及び設備レイアウトの見直しを行っ

た。

ここでは,特に超高圧CVケーブルの製造技術の進歩に

ついて述べる。

3.2.1 超高圧CV製造設備の概要

CVケーブルの超高圧化,長尺化,大サイズ化の要求に

対応するため,愛知工場では超高圧CVケーブルの製造か

ら出荷検査までを同一建屋内で実施できるように,世界最

高水準の縦型絶縁押出(VCV)ラインを初めとする最新の

製造設備が工程の順にレイアウトされている。この絶縁押

出ラインの導入にあたっては,これまで当社が蓄積した豊

富な技術的ノウハウはもとより,現時点で実用化できる最

新の製造技術を取り入れた。

また,長尺化については,大型のターンテーブルを導入

することにより,従来に比べ製造能力を飛躍的に増大する

ことができた。

3.2.2 超高圧CV絶縁工程の異物管理

(1) 材料の異物管理

架橋ポリエチレン絶縁材料については,要求性能に合わ

せて,スーパークリーン材(SC材),ウルトラスーパーク

リーン材(USC材)の2種類の材料を使用できるように材

料受入設備・空送設備の設計を行った。

材料受入については,受入時の異物混入を防止するため,

材料輸送用ローリの洗浄設備およびクリーン度クラス1000

の材料受入クリーンルームを設置した。また半導電材料に

おいては,異物管理強化のため,ベース材料を細密メッシ

ュによりスクリーニングし架橋剤を含浸する半導電材料製

造設備を新設した。

材料搬送方式については,絶縁材料などのペレットを空

気輸送する場合,一般的に低圧高速搬送を行っている。本

工場ではそれに加え,ペレットと管の磨耗を低減すること

図8 CVTケーブル

図9 CVケーブル(アルミ被ケーブル)

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地中・架空送電技術開発と展望 63

のできる高圧低速搬送(プラグフロー)方式を超高圧ライ

ンに採用した。

(2) 絶縁押出ヘッドの異物管理

絶縁押出ヘッドの組立・搬送及び装着までをクリーンル

ーム内で作業できるようにし,押出ヘッドへの異物付着を

防止した。特にヘッド組立室から押出機室へは,クリーン

エレベータで搬送することとした。クロスヘッドの組立・

搬送から押出機への装着の環境はクラス1000で統一され

ている。

(3) クリーンルームの管理

絶縁体押出工程でのクリーンルーム管理の目的は以下の

とおりである。

・クリーン度管理により,ルーム内雰囲気中の最大粉塵

を管理する。

・クリーンルーム内での着衣を含む人間系からの発塵を

管理する。

クリーン度の管理値については,異物が材料中へ混入す

る可能性のある作業では,非整流型クリーンルームで達成

可能なクラス1000で管理することとした。クラス1000で

管理することにより,ルーム中の最大粉塵レベルを5μm

フリーとすることが可能である。

クラス1000のクリーンルーム運用は,付着異物が直接

樹脂中に流入する可能性のある押出ヘッド組立・装着作業

と材料中への異物混入の可能性のある材料受入れ時の繋ぎ

込み作業工程全てに適用した。クリーンルーム用着衣は人

体からの発塵を防止するためのものであるが,それ自体が

発塵源となるため“クリーンルーム運転管理方針”1)に基づ

き,作業性と安全性を考慮して選択した。

(4) 押出機での異物スクリーニング

押出機の異物のスクリーニングに使用するメッシュにつ

いては,スクリーニング効果の高い特殊構成及びメッシュ

の目開きを抑制するためのメッシュ結合方法を適用したス

クリーンメッシュを開発してスクリーニング能力を大幅に

向上させ,超高圧・長尺ケーブル用に適用した。

3.2.3 絶縁押出システムの設備設計

絶縁押出ラインは,超高圧長尺製造ラインとして技術開

発を行い,世界最新鋭の製造ラインを確立した。設備設計

にあたっては,シミュレーション技術を適用して基本設計

を行い,さらに試作機による検証を重ねて最終設計を行っ

た。更に設備立上げ後の検証を十分行い製造ラインとして

認定・稼動させた。上記の一連の過程では,国内はもちろ

ん海外の押出機メーカの調査及び押出実験を行うとともに

広く海外の知見を集め最先端の技術を導入した。

(1) スクリュー設計

従来の押出量重点の設計から,混練の均一性やスクリュ

ー各部での最適溶融状態を達成させるため,コンピュータ

ーシミュレーションプログラムを用い,かつ連続多点温度

計測での検証実験を行い,信頼性の高いスクリュー構造を

設計し完成させた。この設計については,スクリュー設計

では世界的権威であるオランダのアインドホーヘン大学の

協力を得た。図 11にスクリュー設計における樹脂流動解

析の適用例を示す。

図10 最新のクリーン化技術を採用したコンタミネーションフリー工場

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー64 Vol. 51, No. 1 (2001)

(2) クロスヘッド等の樹脂流路設計

コンピュータシミュレーションにより滞留部を生じない

理想形状を完成し,実機でシミュレーション結果を確認し

た。また,ヘッド各部の樹脂流速が均一で偏肉の生じない

構造となっている。図 12にクロスヘッド流路設計におけ

る樹脂流動解析の適用例を示す。

(3) 架橋冷却条件の設計

架橋ラインの条件設定は,架橋・冷却条件(最適線速,

温度)をコンピュータでシミュレーションできるプログラム

を開発し,最適条件が自動設定できるシステムを構築した。

3.2.4 電気試験設備

(1) 試験用変圧器

超高圧CVケーブルの耐電圧試験用として前駆遮断装置

付600 kV試験用変圧器を導入した。この600 kV試験用変

圧器は60MVAの大容量を有し,超高圧・長尺ケーブルの

出荷試験が可能であり,例えば275 kV CV 2 000 mm2の場

合には,2000 m以上の耐電圧試験が可能である。

(2) シールドルーム

CVケーブルの部分放電試験を精密に行うために部分放

電試験専用のシールドルームを設置した(図13)。シール

ドルームの設計に当たっては,目標シールド性能を70 dB

と設定し,外部ノイズを極力侵入させない構造設計を行い

シールド材の材質,部材寸法,接地点,区体の施工方法等

を種々検討し決定した。

3.3 最近の電力ケーブル製品

最近の電力ケーブル製品を以下のとおり紹介する。

3.3.1 超高圧長尺ケーブル

超高圧長尺CVケーブルとして,関西電力ñ殿向けに1条

の長さが2000 mを超える,154 kV CV大サイズケーブル

を納入した。このケーブルの出荷には,約9 mを有する胴

長ドラム(図14)を使用し大阪港まで海上輸送を行った。

また,OFケーブルではインドネシアPLN殿向けに150 kV

OF海底ケーブル(出荷長3600 m)を初め多くの海底ケー

ブルを納入した。

3.3.2 素線絶縁CVケーブル

送電容量の増加を目的に開発された素線絶縁ケーブルに

ついて,当社ではエナメル皮膜を使用した素線絶縁CVケ

ーブルを開発した。

当社の素線絶縁ケーブルの特徴は,エナメルの材質に耐

磨耗性及び耐熱性に優れたポリアミドイミド被覆(AIW)

を採用したことである。また終端及びジョイント部での素

線皮膜除去が確実に確認できるよう塗料を有色(黒色)と

した。77 kV 2 500 mm2のCVケーブル(図15)で試作評

価し,交流導体抵抗の指標となる分割導体係数(KS1)に

ついて,目標値0.25に対し十分裕度のあることを確認した。

3.3.3 遮水層付きCVケーブル

CVケーブルの水トリー対策として,高圧ケーブルでは

鉛ラミネートテープをシース内側に施す,簡易遮水層が採

図11 スクリュー設計における流体解析結果

図12 クロスヘッド流路設計における樹脂流動解析結果図13 シールドルーム

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地中・架空送電技術開発と展望 65

用されている。近年,環境負荷を考慮し鉛ラミネートの代

わりにアルミラミネート遮水層の適用も検討されている。

当社は,154 kV CVアルミ遮水層付ケーブルを開発し,

6ヶ月の課通電試験に供試した。その結果,アルミ遮水層

の機械特性及び遮水性能に対する優れた長期性能を確認し

た。

3.3.4 特別高圧エコ電力ケーブル

環境調和を目的として,高圧電力ケーブルの分野でもエ

コ材料を積極的に適用すべく検討している。

当社では,66/77 kV CVケーブルのシース材料である塩

化ビニルに代え高強度難燃ポリエチレンを使用し,遮水材

に薄肉のアルミ遮水テープを使用したケーブルを開発し

た。両立することが難しいとされていた高難燃性と耐外傷

性の両特性を満足し,また遮水層をアルミにしたことによ

りシース材のリサイクルの可能性を高めた。

3.3.5 光ファイバ複合ケーブル

電力ケーブルと通信ケーブルの複合ケーブルとして

CVTケーブルの電力線3芯と光ファイバを挿入する光ファ

イバ用ダクトを予め製造段階で撚合わせておき,延線後に

光ファイバをこのダクト内へ圧送するショウブロンファイ

バケーブルを開発した。この77 kV CVTションブローン

ファイバケーブルを中部電力ñ殿に納入した。

4.電力機器の技術開発の概要

4.1 電力機器の変遷

電力機器の開発は電力ケーブルの開発や変電所や需要家

の機器の開発と歩調をあわせて進めてきた。電力ケーブル

はまず絶縁紙に高粘度絶縁油を含浸したタイプが適用され

たが,その後,絶縁体中のボイドをなくしたOFケーブル

が開発された。これらの電力ケーブルを接続する中間接続

部および終端接続部は,ケーブルの絶縁紙と同一材質のも

のを現場で手巻きして,補強絶縁体を形成する方法が一般

的に採用されてきた。

OFケーブル用の中間接続部としては,当初は普通接続

部と絶縁接続部の2種類のタイプであった。しかし,高電

圧化,長距離化に伴い,給油区間を分割化する必要が生じ,

これに対応して油止接続部(油浸紙と固体絶縁物を組み合

わせた複合絶縁タイプの接続部)の開発が行われ500 kV

用まで含めて開発,実用化した。なお油止接続部の固体絶

縁部は当初磁器を使用していたが,縮小化のため,絶縁性

能に優れたエポキシ樹脂で成型した絶縁体を適用するタイ

プを開発,実用化した。

ケーブルの終端接続部は当初,気中終端接続部と油中終

端接続部(変圧器との直結接続部)の2種類であったが,

SF6ガスを使用した縮小形の機器であるGISが開発され,

GISに接続するガス中終端接続部の開発,実用化を500 kV

用まで含めて行った。なお,GISの適用により,特に超高

圧系統では,遮断器の開閉操作に伴いガス中終端接続部の

絶縁筒間に高電圧のサージが発生する現象が確認され,シ

ースサージ抑制のため,ギャップレスアレスタやサージバ

イパスコンデンサーを開発,実用化した。

またOFケーブルの地中送電線路は,長距離になるほど

油槽の容量も大きくなり,特に都内の変電所等では,その

設置場所の確保の問題がクローズアップされてきた。OF

ケーブルが実用化されてきた当初より油槽内にはセルと称

する絶縁油の膨張,収縮を吸収する部品を内蔵していたが,

これに対して,変化油量がおおきくとれ,油槽が小型化で

きるベローズタイプの油槽を開発し,主に超高圧のOFケ

ーブル長距離線路で適用されている。

また,OFケーブル接続部の端末シールとして鉛工が採

用されてきたが,当社ではゴムパッキングとスプリングを

適用したメカニカルシール方式を他社にさきがけて開発し,

鉛工を必要としないスキルレスタイプの接続部を500 kV

用まで実用化した。

一方,OFケーブルに比べて保守が容易でかつ絶縁性能

に優れたCVケーブルが注目され,OFケーブルに代わり,

超高圧系統まで含めた電力ケーブルの主流となった。

このCVケーブル用接続部としてはまず66/77 kV以下の

中間接続部は現地で自己融着性の絶縁テープを巻いて補強

絶縁体を形成するタイプを実用化した。その後CVケーブ

ルの高電圧化に合わせて,154 kV以上ではケーブル絶縁体

図14 関西電力殿向け154 kV CVケーブル

図15 77 kV素線絶縁CVケーブル

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー66 Vol. 51, No. 1 (2001)

と同一材質の架橋剤入りポリエチレンテープを現場で巻

き,加熱架橋して補強絶縁体を成形する方法(TMJ)ある

いは金型をセットして現場で溶融したポリエチレン樹脂を

押出し,加熱架橋してケーブル絶縁体と一体化させる接続

工法(EMJ)を開発,実用化した。

一方,22/33 kV用終端接続部は現場で自己融着性のテー

プを巻いてストレスコーンを形成するが,66/77 kV用は

EPゴムおよびエポキシ樹脂を使用してあらかじめ工場で

補強絶縁体を形成し,これを現場で組み合わせるプレハブ

タイプが実用化された。

その後,154 kV用についても66/77 kV用と同様にプレ

ハブタイプを実用化したが,界面のストレスを低減するた

め,内部に絶縁油を封入し,この絶縁油部で一部ストレス

を分担する方式とした。また超高圧用の終端接続部につい

ては,OFケーブル用の設計思想を踏襲して,ケーブル絶

縁体上に絶縁油浸紙を巻き,内部にシリコーン油を充填す

る湿式タイプを開発,実用化した。

しかし,超高圧用のモールドタイプの中間接続部は特殊

なスキルを必要とし,工期も長くかかる問題があり,また

湿式タイプの終端接続部はOFと同様な油の保守を必要と

する問題があった。これらの問題を解決するため,エポキ

シ成形品とEPゴムストレスコーンのみで補強絶縁を構成

する,超高圧用のプレハブタイプ接続機器を材料,製造,

出荷試験,施工のすべての面で改良,開発を重ね,275 kV

用まで実用化した(乾式タイプ)。

一方,66/77 kV用の機器直結タイプ終端接続部について

機器メーカーの協力を得ながら縮小化の検討をすすめ,電

力会社の規格にとらわれない当社独自の各種ユニークな製

品を開発,実用化してきた。これらの開発で培った技術を

生かして,154 kV用への高電圧対応や中間接続部の縮小化,

簡略接続構造への応用,製品化を進めてきた。

4.2 66/77 kV用接続部の開発

CVケーブルはOFケーブルにくらべメンテナンスが容易

な点がメリットであり,CVケーブル用接続部でも低スキ

ルで扱え,高信頼性を有する製品が求められ続けてきた。

当社の66/77 kV CVケーブル用接続部に於ける製品開発

の歴史は大きく二つに分けられる。

一つはC-GIS用接続部に代表されるシステムとして大

きなメリットを生む機器直結形接続部の開発である。当初,

機器メーカー殿の要請を受け,盤間をケーブルで接続する

為の縮小形接続部を開発した事に端を発し,多くの機器直

結形ケーブル接続部を開発・納入している。これらの製品

群は単にケーブル用終端接続部としての機能や仕様に囚わ

れず,機器の一部品としての機能・仕様を満足する事を開

発条件とした。又,その事がケーブルメーカーとしての枠

に固執しないユニークな製品作りに役立っている大きな要

因となっている。

近来の開発製品の一例として66/154 kVスマートガス中

終端接続部を図 16に示す。この製品は多くの機器直結形

終端接続部開発の縮小化技術を踏襲し,154 kV用でありな

がら,従来形66/77 kVガス中終端接続部より小型になっ

ており,機器設計のスペース確保,組立作業性の改善に配

慮した製品として実用化している。

もう一方の開発の方向性として接続のスキルレス化や簡

易接続技術が上げられる。中間接続部としての簡易接続技

術としては常温収縮形ゴムユニットを使用した1ピースタ

イプのプレハブ接続部とエポキシユニットとストレスコー

ンを使用した複合絶縁形プレハブ接続部(エポPJ)の2種

類がある。

エポPJに関しては,機器直結形終端接続部で培った縮

小化技術を踏襲し,従来に例を見ないコンパクトで容易に

接続ができる接続部を開発し,実用化した。このエポPJ

は異径接続や,大サイズケーブル適用面で大いにメリット

がある。

また,エポPJの新たな展開として66/77 kV縮小形Y分

岐接続部が上げられる(図17参照)。縮小化技術を数多く

取り入れた結果,寸法は従来の1/2,重量は1/4(当社比)

となり,これによりマンホールスペースの60%縮小化,取

り付けに必要な金物質量の1/2軽量化を達成した2)。

このように当社製品の特徴を十分に生かして,機器直結

形接続部に於ける機器設計合理化や縮小形Y分岐接続部に

於ける現地土木建設,施工スペースの低減等,常に関連技

術,システムに融合した製品作りを進めてきたが,今後も

お客様のニーズに適合した製品開発に注力していく。

4.3 154~275 kV用接続部の開発

(1) 中間接続部

154~275 kV CVケーブル用中間接続部はモールドタイ

プが最初に開発され,1984年に東京電力殿 横浜火力向け

に154 kV用モールド形接続部を納入した。また1994年に

はインド向けに220 kV用モールド形接続部を納入した。

しかし,モールド形接続部には施工時間の制約,現場での

高度な品質管理等の課題があった。それを解決するために

補強絶縁体をあらかじめ工場で成形し,性能を確認した後,

66/154 kV�スマートガス中終端接続部�

66/77 kV 現行品�

154 kV 現行品�

700800

485590

276346

図16 66/154 kVスマートガス中終端接続部

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地中・架空送電技術開発と展望 67

現場でこれらの絶縁体を組み合わせるプレハブタイプの接

続部(PJ)の開発を,超高圧対応として1991年に着手し

た3)。PJの主絶縁部はエポキシユニットとゴムストレスコ

ーンおよびケーブル絶縁体で構成されている。

超高圧用のプレハブ接続部の開発に当っては,以下に示

す通り,設計,製造,検査,施工の各々で基礎データを取

得し,改良を重ねた。

A.基本設計

・界面圧力の基礎データ取得(ヒートサイクルを含む界

面面圧の測定)

・モデルによる界面破壊ストレスの基礎データ取得

・各部ストレスの最適化

B.製造方法(エポキシ成形品,ストレスコーン)

・異物混入防止

・ボイド発生の防止

・硬化および架橋加熱の安定化

C.検査方法

・単体部分放電測定装置の開発,出荷試験方法の確立

D.施工方法

・絶縁体表面の平滑化

・エポキシユニット挿入治具の開発

・界面への異物混入防止(クリーンブースの適用)

この開発で培われたノウハウを用いて,まず154 kV用PJ

を1994年に実用化し,東北電力殿 中山線,および海外向け

に初納入した。その後,超高圧のPJとして,1996年に

220 kV用PJを中国 青島に初納入し,さらに2000年には

230 kV用PJをシンガポールPG向けに多数納入した(図18)。

(2) 終端接続部

275 kV CVケーブル用終端接続部は,まずOFケーブル

用終端接続部の設計を踏襲して,ケーブルコア上に現場で

絶縁油浸紙を巻き付けて補強絶縁体を形成した後,シリコ

ーン油を充填する湿式タイプを開発し,1986年東京電力殿

墨東変電所向けにガス中終端接続部(EB-G),油中終端接

続部(EB-O)を初納入した。1994年には,超高圧のプレ

ハブ接続部の開発データをもとに,油を必要としない乾式

タイプのEB-Gを開発した4)。乾式EB-GはPJと同様,主絶

縁部はエポキシとう管とゴムストレスコーンおよびケーブ

ル絶縁体で構成されており(図19),油の監視,保守の必

要がなく(メンテナンスフリー),油槽も不要である。

275 kV用乾式EB-Gは1998年に東京電力殿 豊岡変電所に,

また乾式の油中終端接続部(乾式EB-O)は2000年に東京

電力殿 新木更津変電所に初納入した。乾式終端接続部の

開発では,基本的にPJの開発技術を踏襲しているが,終

端独自のものとして,機器との取合界面となるとう管とト

ランス油界面およびとう管とガス界面の絶縁破壊強度の基

礎データを取得し,終端の性能面には問題のないことを確

認した。

5.電力工事技術の概要

5.1 電力工事の変遷

日本における電力ケーブル工事の歴史は1900年頃に牛車

を使用したドラム運搬による直埋式ケーブル引入が最初の

姿として登場した。その後,1920年過ぎに管路式のケーブ

ル布設方式が導入され,引入方法としては人力または手引

ウィンチが採用された。その後,昭和に入り,引入用のウ

ィンチがウィンチ車へと変化していった5)。

当社における電力工事は1953年日本国有鉄道に納入した

赤羽-神田線(66 kV 1×200 mm2 OF)が最初であり,

1958年には日本初の154 kV OFケーブル線路である蔵前線

(東京電力)の布設に参加した。この時の布設方式は図20

に示すようなウィンチ車を使用した管路式1孔3条ケーブ

ル引入方式である。

1965年に入ると,社会の急速な発展に伴ない電力需要は

著しく伸び,基幹送電線,超高圧大容量化のニーズによる

超高圧線路の建設が本格化した。

中部電力殿知多火力発電所に納入した 275 kV 1×

1200 mm2 OFケーブルを始めとして姉ヶ崎火力,渥美火力,

高砂火力および福島原子力と275 kV OFケーブルを多数納

入した。この時期の布設形態の特徴としては,大サイズケ

図17 66/77 kV縮小形Y分岐接続部

図18 230 kV用シンガポールPG向プレハブ接続部

6 押し金具フランジ

5 押し金具

4 プレモールド絶縁体

3 通電部

2 接続部本体

1 導体

部分 品  名

A導体接続管 F絶縁筒Bエポキシユニット G銅管Cプレモールド絶縁体 Hエポキシユニット保護金具Dプレモールド絶縁体圧縮装置(A) I防食処理部Eプレモールド絶縁体圧縮装置(B)

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー68 Vol. 51, No. 1 (2001)

ーブルを収納した大型ドラムの低床トレーラーによる運搬

とピット内に収納したケーブルの熱挙動対策として実施し

たスネーク布設が挙げられる。図 21に福島原子力発電所

第1号機工事で採用したスネーク取り機を示す。

1970年以降はさらに東京都心部における超高圧地中送電

網の計画により大サイズケーブルの大量工事のニーズが発

生した。これに対応するために工事技術,特にケーブル延

線作業の機械化が促進され,その技術は日本初の275 kV

OFケーブル長距離線路である江東・城南線(東京電力殿)

に採用された。

この当時に開発された延線技術が,現在実施されている

洞道延線工法の基礎を成しており,特に電動機器によるケ

ーブル延線と電動機器の一括制御方法が確立された。図22,

23に当時の洞道延線時の基本的な機器配置と機器制御の概

念図を示す。

また接続作業の効率化を考慮し,接続機材の準備撤去時

間を短縮する目的で,必要機材をセット化した接続作業車

が開発された(図24)。またケーブルの大サイズ化に比例

して大きくなった鉛工部の作業時間短縮とスキルレス化を

目的としたプレハブ型の鉛工部「無鉛工接続部」が開発さ

れたのもこの時期である(図25)。

OFケーブル工事の技術開発と並行して66 kV CVケーブ

ルを対象とした接続作業の技術開発が行われ,「ケーブルの

加熱整直方法」「導体口出し器」(図26)「ペンシリング器」

(図27)「自動テーピング装置」(図28)等が開発された。

1975年までの間に工事技術は大きく進歩し,現在の基礎

が形成され,その内容は1976年の昭和電線電纜レビュー第

26巻第2号に「工事近代化特集」として掲載された6)。

1975年以降OFケーブルは500 kV級の地中送電線路の開

発を目指し,CVケーブルは154 kV級の地中送電線路への

適用が検討され始めた。

154 kV CVケーブルの地中送電線路化で特筆すべき点

は,従来,ケーブルの熱挙動対策として実施していた防災

トラフ内での水平スネーク布設を防災トラフ無しの縦スネ

ーク布設形態とした事および接続部の構造をテープ巻接続

部からテープモールド式接続部(TMJ)に変更した点であ

る。本方式は1983年東扇島線(東京電力殿)に採用され,

中山線(1996年東北電力殿),名城名北線(1998年中部電

力殿)へとその技術が受け継がれることとなる7),8)。

一方,500 kV OFケーブルの地中送電線路化は国内各電

力会社で実施された 275 kV 大規模工事:京浜潮田線

(1984年東京電力殿),墨東線(1986年東京電力殿),梅森

南武平町線(1988年中部電力殿)等の技術を結集して1994

図20 1孔3条引き延線概要図

図21 スネーク取り機

850±501145±15

φ465±1

φ370

φ500

950±10

φ44-0.2

(φ290)�

0

図19 275 kV用ガス中終端接続部

導体公称断面積 D寸法(mm)(mm2)

800~2000 44

2500 60

A導体引出棒 J絶縁筒

Bロックナット Kプレモールド絶縁体圧縮装置

C導体固定金具 L中間フランジ

D上部金具 Mケーブル保護金具

Eエポキシがい管 N上部コロナシールド

Fストッパー O下部コロナシールド

Gプレモールド絶縁体 POリング

Hアダプター Q防食処理部

I押しパイプ

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地中・架空送電技術開発と展望 69

図22 延線作業配置図

図23 延線作業における機器配置図(洞道内)

図24 ケーブル接続工事車(2 000 cc,2.5 t積) 図25 超高圧アルミ被OFケーブル用無鉛工接続部

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー70 Vol. 51, No. 1 (2001)

図28 自動テーピング装置TP-62による接続作業

図27 “P”タイプペンシリング器

図26 “S”タイプ導体口出し器

図29 MC-200C型電動キャピタライ使用例

接続部の構造変化に伴ない工事技術にも変化が見られるよ

うになった。

終端接続部の大きな変化は「湿式」から「乾式」(1997

年)への変化であり,これに伴い終端接続部組立時の絶縁

紙巻作業および絶縁油油填作業がなくなり66 kV~275 kV

級までの作業が管理レベルを別にすれば同一となった。

直線接続部についてはテープモールド式接続部(TMJ)

に続く技術として押出しモールド式接続部(EMJ)が開発

され,その後プレハブ式接続部(PJ)へと変化して行った。

現在はプレハブ式接続部が主流になりつつあるが,主絶

縁部分の材質がエポキシ製のものと絶縁ゴム製の2種類に

大別される。特に66 kV級についてはテープ巻式接続部か

ら絶縁ゴム製の接続部に切り替えるユーザーが増えつつあ

り,今後はより軽量小型化され,さらに簡素化された構造

の接続部へと進化して行く事が期待される。

5.2 電力工事技術の進捗

ケーブルの超高圧化・大サイズ化と並行し,新たなニーズ

として接続部の数量低減による工事期間の短縮と工事費用

の削減が浮上して来た。特に都市部においては交通規制に

より充分な作業時間の確保が困難なため,接続箇所の低減

効果のあるケーブルの長スパン化は必須検討課題となった。

当社での最初の長スパン延線は1987年に施工した月島線

年に本四連系線(電源開発殿)として香川県坂出CH~岡

山県児島CHに至る22 kmの長距離線路となって実現され,

当社もその一部を担当し施工を行った。

施工に当っては,国内最大級のケーブル500 kV 1×

2500 mm2 OFケーブルの重量と外径を許容し且つ軽量小型

化された電動キャタピラ(図29)が採用され,電動機器の

制御システムも長スパン化に適応できる制御システムが採

用された9)。スネーク取り機も前述の福島原子力で使用さ

れた物と比較するとかなり様変わりした(図30)。

また,接続箱の鉛工部については同時期施工の他社が依

然として手作業による鉛工作業を行う中,当社のみ無鉛工

接続部を採用した。

現在OFケーブルに替わり主流となっている275 kV級

CVケーブルについても,1986年墨東変電所(東京電力殿)

への初納入以来,地中線化の検討が進められて来た。ケー

ブル延線工事についてはOFケーブルのそれとさほどの変

化は見られないが,接続技術については終端接続部,直線

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地中・架空送電技術開発と展望 71

(東京電力殿)で,66 kV CVTケーブルを1スパン1200 m

の長さで布設した。その後,海外の件名も含めて数件の長

スパン延線を経験したが,2000年,上本町線,上本町・本

町線(関西電力殿)において 154 kV CVケーブル 1×

2000 mm2,1200 mm2 2200 mの洞道延線が行われた。

使用されたケーブルドラムは道路の許可条件をクリアす

るために鍔径を制限し,胴幅を極端に長くした特殊ドラム

が採用された。また運搬用の車両にはこの特殊ドラムを駆

動出来る専用のトレーラーが使用された(図31,32)。ケ

ーブル布設時に使用された電動機器と制御システムは本四

連系線で実績のある方法にさらに改良が加えられたが,機

器の監視を含め総勢60名の人員により作業が行われた。ま

た,本線路では洞道部だけではなく管路部においても数多

くのマンホール引き通しが採用され,従来と比較した場合,

接続部箇所が半数近くに削減された。

一方,超高圧ケーブルの工事においては,接続作業にお

けるより高度な品質の確保が要求されるようになった。特

に接続作業時はクリーン環境が必要であり,変電所構内,

洞道内およびMH内での環境作りには本作業と同様に時間

を要する場合がある。

154 kV級以上のCVケーブルにおけるクリーン環境の要

求レベルはクラス100 000であり,クリーンルーム内では

防塵服を着用し作業を実施している。図 33,34に工事現

場における一般的なクリーンルーム内の作業状況を示す

が,1970年代に全盛であったOFケーブル工事時代の「工

事屋」とは程遠い姿となっている。

5.3 電力工事の今後の技術課題

IT革命による情報化が進む中,工場のラインはコンピュ

ータによって制御された機械,いわゆるロボットにより無

人化が進んでいくが,工事現場では熟練作業者による作業

が未だに必要とされている。工事現場のロボット化につい

てはこれまで検討されてきているが実現されていない。こ

れは工事の持つ特殊性,即ち,現場毎に固有の作業環境があ

るために工場のラインのように据え付けた機械による同じ

作業の繰り返しが出来ないといった弱点があるためで有る。

新規の設備工事が激減する事が予想される現在,熟練者

だけでなく作業者自体の確保が困難となることが予想さ

れ,これに対応するためにも

(1) 超高圧ケーブルの軽量縮小化による簡便な作業

(2) 接続部構造の軽量簡素化による簡便な接続作業

の実現が望まれる。

しかしながら上記2点は一朝一夕には実現出来ない課題

であるため,品質レベルを落さない範囲で現状の作業の簡

素化を検討する事が第一の課題である。

第二に考慮すべき点は過去の技術・事象の正確な継承で

ある。高度成長期に施工された設備のほとんどが30年以上

の設計寿命を迎えつつある現在,これらの設備のメンテナ

ンス業務が一気に押し寄せて来ると思われる。メンテナン

図30 スネーク取り装置

図31 特殊ドラム用トレーラー

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー72 Vol. 51, No. 1 (2001)

ス業務自体は限られたメンテナンス業者により実施される

としても技術的なサポートは施工したメーカーに依存され

る事が予想される。過去の記録を技術データとして事象の

理由と共に正確に保存・継承していく事が必要と思われる。

第三の検討課題としては新業種への展開である。電力工

事だけでなく通信工事との総合的な技術の統合を計り,市

場の変化に適合した工事体制を確立する事が必要である。

6.保守技術に関する技術開発

6.1 CVケーブル保守技術の進歩

(1) 部分放電測定

油浸ケーブルからCVケーブルへと切り替わるにつれ,

部分放電測定の目的は絶縁診断から初期欠陥の検出に移っ

ていった。当社では部分放電の現地試験でのノイズ除去10)

や発生位置標定11)に関する技術開発を行い,実線路での絶

縁診断で成果をあげている。ノイズと部分放電信号を区別

するために,パルス極性判別,アンテナからのノイズ検出

によるパルス同時性判別等を提案して実用化した。これら

の技術は現在の部分放電測定装置にも活かされている。

(2) 劣化診断技術

CVケーブルの絶縁劣化診断法を表 1に示す。各種診断

方法が提案されている。直流漏れ電流測定については,近

接構造物の影響で気中コロナ放電が発生して測定誤差を生

じることがある。これによる誤差を小さくするために光フ

ァイバ式直流漏れ電流測定器の開発を行った12)。

22 kV以上のCVケーブルでは劣化診断手法として確立

されたものはまだないことから,ケーブルの状態を継続的

に観測する手法の開発をおこなった。シースが多点で接地

されている線路であっても常時tanδを測定できるシステ

ムである13)。

当社では撤去ケーブルでの測定や強制劣化試料での試験

でデータの蓄積を図っており,早急な判定基準の確立を目

指している。

(3) 超低周波高電圧発生装置

ケーブル線路は静電容量が大きいため,交流の高電圧を

印加しようとすると大容量の電源設備が必要となる。周波

数を低くすれば電源容量の制約が小さくなり,ケーブルの

交流特性の測定が容易になる。当社は0.1 Hzの超低周波高電

圧発生装置と超低周波誘電正接測定装置を開発している15)。

商用周波数とは2桁以上の違いがあることから他回線から

の誘導等の影響を受けずにすみ,安定した測定が可能であ

る。現在は,最大発生電圧80 kVの超低周波発生装置を使

った試験を行い,66 kV級での劣化診断の検討を行ってい

る。電圧の正負切替時においても滑らかな波形を得られる

こと,および外形寸法が小さいことが当社装置の特徴であ

る。図35に外観を示す。

(4) 故障点標定装置

万が一ケーブル線路で絶縁破壊事故が発生した場合,早

急に故障点の位置標定をおこない復旧作業にかかる必要が

ある。GISに接続された線路の場合には,線路の片端から

しか位置標定ができない場合がある。そのような場合でも

精度よく故障点の探索ができるようにと,電流検出型のケ

ーブル故障点位置標定装置の開発を行った16)。高電圧パル

スを印加して,故障点で発生する放電による反射波電流を

検出する。電流検出型であるため,ノイズに強いことが特

長である。

図34 クリーンルーム内作業

図33 クリーンルーム内作業

図32 長尺延線用特殊ドラム

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地中・架空送電技術開発と展望 73

(5) AC耐電圧によるスクリーニング

耐電圧試験として広く行われている直流電圧による方法

は,交流電圧の場合とは絶縁体内部の電界分布が異なるこ

とから,必ずしも有効な試験法とはいえない。当社は,最

大発生電圧100 kV,容量4000 kVAの可搬型交流耐電圧試

験装置を開発した17)。6600 Vで受電し,誘導電圧調整機に

より任意の試験電圧を設定できる(図36参照)。多くの特

別高圧ケーブル線路の試験に使用されており,劣化した

CVケーブルのスクリーニングに成果をあげている。

6.2 架空送電線路における診断技術の開発

架空送電線路では,落雷による架空地線の素線溶断を検

知する必要がある。当社では,遠隔操作による自走式の架

空線自動損傷検出器を開発している18)。渦電流センサーに

より電線表面の傷を検出し,レコーダーと写真に記録する

方式である。電線上にはスリーブや各種ダンパーが取り付

けてあるため,これらを回避して自動走行できるようにし

てある。さらには,500 kV送電線の誘導電圧がある場所で

も支障なく測定できる装置も開発した(図37)。

6.3 今後の研究課題

老朽化した設備が増加するにつれ,既存設備を寿命限度

まで使用したいという要求が強くなっている。新設時の健

全性確認は当然として,経年設備の残存寿命予測,絶縁破

壊事故の未然防止等が必要である。

近年は,点検に関わるコストも合理的な範囲に抑えるこ

とが要求され,機器の状態監視に基づいた点検(Condition

Based Maintenance)がなされつつある19)。そのためには,

信頼できる絶縁診断法および劣化判定基準の確立がメーカ

ーとして早急に解決せねばならない課題である。

7 . あ と が き

20世紀に送電技術は著しく進歩したが,主に,高電圧化,

大容量化の世紀といえる。

しかし,送電網がほぼ張り巡らされ,今後,新規の送電

線建設が減少すること,また,少子化現象に見られる労働

力の減少が予想されることから,送電線技術として,既存

設備の保守・点検技術,スキルレス・自動化技術,が強く

求められている。また,ケーブル・接続部の縮小化・低コ

スト化,布設・接続作業の効率化を始めとした,線路建設

費の低減も大きな課題である。

これらの要求に対し,当社はコンパクト機器の開発を始

め,幾多の技術開発を行い要求に応えてきたが,今後も,

これまで培ってきた技術を生かし,新たな送電技術の向上

に取り組んでいく所存である。

図36 可搬型交流耐電圧試験装置の回路

図35 超低周波高電圧発生装置

表1 CVケーブルの絶縁劣化診断法 14)

絶縁劣化検出原理による分類対象ケーブル 印加電圧

誘電緩和現象の変化 絶縁抵抗の低下

直     流 - 直流もれ電流法

特別高圧(非活線)

商 用 周 波 損失電流法(高調波)

ケーブル 超 低 周 波 誘電正接法 -

直流と商用周波 残留電荷法 直流重畳法

図37 架空線自動損傷検出器

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昭 和 電 線 レ ビ ュ ー74 Vol. 51, No. 1 (2001)

参 考 文 献 

1)クリーンルーム運転管理指針,JACA,No. 14C-1992(社団法人

日本空気清浄協会発行)

2)橋口宏,他:「66/77 kV縮小形Y分岐接続部の開発」,昭和電線レ

ビュー,Vol.50,No.1(2000)

3)新井他:「275 kV CVケーブル用プレハブ接続部の開発」,昭和電

線レビュー,Vol.43,No.2(1993)

4)松倉他:「275 kV乾式終端接続部の開発・納入」,昭和電線レビュ

ー,Vol.50,No.1(2000)

5)東京電力ñ工務部:地中送電技術史

第5章 第1節,p.272(1995)

6)平井 武,他:「自動延線装置の開発と実用化について」,昭和電

線電纜レビュー,Vol.26,No.2,(1976)

7)中挟俊明,他:「東京電力ñ・東扇島線154 kV CVケーブルの布

設工事」,昭和電線電 レビュー,Vol.34,No.1,(1984)

8)佐藤浩正,他:「東北電力ñ殿向け中山線154 kV CVケーブル用

PJ・TMJの納入」,昭和電線レビュー,Vol.47,No.1,(1997)

9)長谷川博之,他:「超高圧ケーブル用延線機材の開発」,昭和電線

レビュー,Vol.43,No.2,(1993)

10)相原,海老沼,南:「論理制御による雑音除去機能をもった部分

放電測定装置の開発」,昭和電線電 レビュー,第30巻第1号

(1980)

11)大野,田辺,勝田,坂口,小笠原,相原,藤原,難波,海老沼,

佐々木,永岡:「部分放電の発生位置標定法の開発」,昭和電線

電 レビュー,第35巻第2号(1985)

12)川村,酒井,荒金,相原,黒沢,海老沼,永田:「光ファイバを

用いた直流漏れ電流測定方法の開発」,昭和電線電 レビュー,

第34巻第2号(1984)

13)登坂,宍戸,佐々木,池内,海老沼:「地中ケーブルの常時活線

診断監視システムの開発」,昭和電線レビュー,第46巻第1号,

(1996)

14)荻島,海老沼,川井,藤原,相原:「22 kV~77 kV級CVケーブ

ルの絶縁劣化診断法の検討」,昭和電線レビュー,第46巻第1号,

(1996)

15)海老沼,荻島,相原,芳賀:「超低周波高電圧による22~33 kV

CVケーブルの絶縁測定」,昭和電線レビュー,第43巻第2号,

(1993)

16)安藤,川島,荒金,相原,藤原,品川:「電流検出型のケーブル

故障点標定装置の開発」,昭和電線レビュー,第38巻第2号,

(1988)

17)小林,戸谷,坂口,荻島:「66 kV CVケーブル線路のAC耐圧に

よるスクリーニング」,昭和電線レビュー,第 46 巻第 1号,

(1996)

18)大井,峰村,葛城,永見,高橋,池田,海老沼,菅野,木内:

「架空線自動損傷検出器の開発」,昭和電線レビュー,第38巻第2

号,(1988)

19)電気協同研究 第56巻第2号:「変電設備の点検合理化」,(2000

年10月)

佐藤  淳(さとう じゅん)電線技術部 架空線技術 課長1988年入社架空線の開発に従事

土屋 裕二(つちや ゆうじ)電力ケーブル技術部 技術・品質保証課主査1983年入社電力ケーブルの設計・製造に従事

新井 敦宏(あらい あつひろ)電力機器技術部 送電グループ 主幹1979年入社電力ケーブル付属品の設計に従事

堀田 信彦(ほった のぶひこ)地中線施工部 技術・品質・保証 課長1982年入社電力ケーブル工事設計に従事

品川 潤一(しながわ じゅんいち)電力システム開発 室長1975年入社超高圧ケーブルおよび付属品の開発,高電圧試験法や高電圧過渡現象の研究に従事

松本 信行(まつもと のぶゆき)電力システム技術 部長1977年入社電力ケーブルの設計・製造に従事